以下の文書は「県央高速交通」発行の同人誌「鉄道下方(縮地・縮歩1.9号)」(2005年8月発行)に寄稿したものに

加筆・変更を加えています。


地上デジタル放送がやってくる。大丈夫なのか・・・?


 まもなく、新潟県でも弥彦山送信所を皮切りに地上デジタル放送が開始させる。すでに試験電波を深夜にこそっと出しているらしい。試験放送開始は05年10月の予定だ。そして、06年4月からNHK総合・NHK教育・NST・BSN、06年10月からTeNY・NT21が本放送を開始する。
もちろん街の家電販売店の私にとってビジネスチャンス以外のなにものでもない。まぁ、テレビが高いだの、あと6年間はアナログで見られるからいいだの「まだいらない」攻撃を受けている。しかし、問題はそんなことではない。不安がとにかく多すぎるのだ!
確かに東京・名古屋・大阪で放送が始まって早1年半経っている。その後に徐々にエリアも広がっている。問題も起きたが対処もされてきた。聞けば「大きなトラブルはない」という。ただ、この地域に「電波が出た」実績がないのだ。何が起こるかわからない。
いままで起こってきたこと、今後起こりえることをまとめました。脅しではありませんが、放送に興味をある方には知っておいて頂きたいことばかりです・・・

1. 噂・うわさ・・・本当に噂なのか?
 これは・・・あまり大きな声で言えることではない。2年ほど前から長岡周辺を中心に「NT21の映りが悪い」と言われている。理由としては「弥彦山の送信所の改造工事で、電波の飛びが悪くなった」と、まことしやかに伝えられた。事実かどうか、いまだに不明ではある・・・

2. 現行アナログ放送を見る人への影響
 デジタル放送の周波数を空けるための、いわゆるアナアナ変換は県内では湯之谷送信所が残っているが間もなく終わる。ここで問題が終わるほど世の中甘くない。
@ 増幅器(ブースター)の能力が足らなくなる?
 一番影響が大きいのがこれであろう。デジタル放送はすべてUHFで送信される。つまり現在の21/29/35に加えてデジタル放送で13/15/17/19/23/26の6チャンネルが増える。合計9チャンネルだ。
 15:NHK総合 13:NHK教育 17:BSN 19:NST 23:NT21 25:TeNY)
 ただし、従来のブースターはせいぜい5チャンネルを増幅する性能しか持っていない。つまり、デジタルを見なくても電波を受ける以上、利得不足になることが考えられる。
 さらに、徐々に放送を開始する放送局が増えるだけならまだしも、送信出力も徐々に上げていくというのだ。そうした場合、ブースターの利得調整が必要になる。そのたびに屋根なんか上がってらんねぇよ!
 もちろん、現在発売されている(少なくても現在私が工事に使う)ブースターはUHF9波対応で自動利得調整を持っているので問題ない。しかし、既設のものは非常に多い。
故障でもないブースターを交換する必要がおのずと出てくるかも知れない。
A 屋内・ビル内にチャンネル変換して送っているケースは多い。
 ホテルなどには多いが、衛星放送や独自番組をUHFに変換して構内に配信しているケースがある。家庭でも昔のBSチューナーは13ch出力が可能だったので、分配前に乗せている家がある。しかしチャンネルがかぶればノイズがでる!下手をすれば近隣にまで妨害を与える事態を生む。出力チャンネルの変更が出来ないなら全部機械の入替えだ!


3. デジタル放送を見る人の混乱
 さあ、デジタルテレビを買ったぞ!本当に簡単に使えるのか・・・?
@ チャンネルのボタン番号は統一される。
 一般家庭で最初に戸惑うのはこれだろう。今までは各家庭によってどのボタンを押したらどのチャンネルが映るかは自由に設定できた。そして、家中のテレビをみんな同じにしてあるはずだ。しかし今度は「すべての家庭のすべてのテレビ」が統一される。
 新潟県では 1:NHK総合 2:NHK教育 4:TeNY 5:NT21 6:BSN 8:NST だ。
 今までだと、BSN・NHK総合・教育は、まんま5・8・12にして、UHFは各家庭で好きに決めていることが多いように思う。テレビの地域による自動設定でもメーカーでバラバラだ。この統一による混乱は必死だ。(余談だが開局時TNN(現TeNY)は4、NT21は3に設定する推奨があった。ビデオが2chで唯一UHFのNSTを1していた家が多かったため)
NHKを見ようとして8を押してNSTが映る。BSNを見ようとして5を押したらNT21が映るのだ。百歩譲ってNHKが全国を1・2で統一しようとしたこと(一部は民放が使っているのでダメだったが)とNSTがフジテレビ系列で8にしたのはいい。BSNがTBS系列だから6もまだいい。でも、何故5をNT21が使うのだ!?せめて10にしろよ!
もちろん新聞のテレビ欄にもボタン番号が書かれる。ただ慣れるまでが大変だろう。
A 共同アンテナの地域・マンション・アパートは大丈夫か?
 UHFをそのまま各家庭に送ればいいのだが、かなりの場合UHFはVHFに変換して送っている。(最近はそうであってもUHFも直接そのまま再送している場合もあるので、それを除けば)いまさらUHFを簡単に流せないシステム構築になっているケースもかなりあり、機器の入れ替え等費用と手間がかなりかかることが予想される。

4. ますます我々の楽しみは奪われる。
 アナログ放送だから出来た、アナログ放送だから楽しめた・・・そんな趣味の幾つかは消える。
@ 長距離受信が出来なくなる。
 たとえば新潟県でもテレビ東京を見ている人はいる。過去にはNTTの中継波を傍受していたがそれもデジタル化によって消えた。また、地上高を上げて12ch専用アンテナまで立ててブースターで増幅して見ると言うことまでも不可能にしてしまう。
 なぜならデジタルは「映る」か「映らない」がはっきりするので「電波が弱いがわずかに映る」は存在しない。長距離受信という趣味はラジオのみになってしまう。
 しかし!ラジオも将来的にデジタル化する計画も無くはないのだ。いったい知的探究心を追い求める好奇心をそこまで国が奪ってしまってよいものだろうか??
A オンエアライブラリーは消滅する?
 著作権保護のとも、オンエアを録画することも規制の対象となる。すでに実際BSデジタルで行われているが、デジタル機器での録画は「1回のみのコピー可」になっている。誤解されがちだが、1回のみコピーとは「DVDやHDDに録画する」が1回コピーなので、基本的に編集が出来ない。いわゆるマイベストやマッド作品を作れなくなる。そこまでの権利を奪われたくは無いのが本音だ。アナログ機器がいつまであるか・・・
 
 さまざまな問題の可能性を残しつつ、新潟県でも地上デジタル放送は始まってしまうのだ・・・